高鮮度維持凍結(プロトン凍結)とは
天然猪の狩猟期間は僅か3か月(11/15~2/15)と限られており、この期間にしっかりと目利きをし仕入れを行っても、処理・保管状態が悪ければ何の意味もありません。
長年しし肉の販売を行う中で、最も大きな課題となるのが「鮮度維持」です。
その最大の問題である「鮮度維持」をクリアする為に導入したのが[プロトン凍結]です。この機器の説明をする前に、[急速凍結]と[緩慢凍結]の違いについてご説明させて頂きます。
急速凍結とは
急速凍結とは、特別な仕様の凍結設備を使用し素材を素早く凍結する方法です。
素材内部の水分が凍る温度帯(最大氷結晶生成温度帯)を素早く通過させる事で、氷の結晶を出来るだけ小さく抑える事で、素材の細胞破壊を防ぐ効果が期待できます。

プロトン凍結での氷の結晶
素材内部の氷結晶を小さくする事で、素材自体の細胞壁の損傷を減らす事が可能になります。
※ 画像提供:㈱菱豊フリーズシステム
緩慢凍結とは
緩慢凍結とは、家庭の冷凍庫と同じ仕組みで素材を凍結する方法です。
素材内部の水分温度がゆっくりと低下する為、氷の結晶が大きく膨らみ素材の細胞を破壊してしまいます。結果、解凍の際に破壊された細胞壁から旨味成分が流出すると共に、素材の食感や風味が変わる事になります。

緩慢凍結での氷の結晶
素材内部の氷結晶の大きさにバラつきが出来る為、素材事態の細胞壁の損傷に至ります。
※ 画像提供:㈱菱豊フリーズシステム

急速凍結と緩慢凍結の凍結曲線の比較
急速凍結・緩慢凍結を比較する上で、重要なのが[最大氷結晶生成温度帯]をいかに早く通過するかが、非常に大切になります。
[最大氷結晶生成温度帯]とは
素材を凍結するに際し、温度を下げることで氷の生成が最大になる温度帯があります。この温度帯の事を[最大氷結晶生成温度帯]と言います。
一般的に氷は水に浮きます。
これは水が氷(固体化)になって体積が増えた事によるものです。
この事について不思議に感じる方は少ないと思うのですが、科学の観点からみると液体が凍結して体積が増える物質は非常に珍しいのです。
水は4℃の時が最も体積が小さく、それ以下になると体積が増えます。水と氷の差は内部に含まれる気体の量です。凍る際に氷分子の廻りはスキマだらけになります。その状態で固まる為に膨張し体積が増えるのです。
この体積の増える期間が[最大氷結晶生成温度帯]と言われる期間であり、その期間を出来る限り短時間で乗り切る事で素材の損傷を最小限に抑える事が可能になります。
[急速凍結]が更に進化した[プロトン凍結]とは
☟ プロトン凍結の凍結イメージを図解化してみました ☟
プロトン凍結の場合

磁石・電磁波の効果により、食品素材の細胞内の分子が細かな状態になります。冷風の効果で素早く凍結が完了します。
鮮度・美味しさを維持します。
緩慢凍結の場合

最大氷結晶生成温度帯を素早く通過出来ないと、水分膨張により食品素材の細胞壁を破損する事になります。
品質低下に繋がります
※ 画像提供:㈱菱豊フリーズシステム
■ プロトン凍結のメリットとは ■

① ハイブリッド凍結技術
磁石(均等磁束密度)、電磁波と冷風をハイブリッドした凍結技術です。

② 氷の粒を大きくしない
凍結時の氷核生成に働きかけ氷核を多数生成し、小さな氷結晶を作ります。

③ 鮮度・美味しさを維持
食品の組織細胞の損傷を防ぎ、解凍時の流出ドリップ量を少なくします。